2018 年 2018 巻 94 号 p. 1-8
本稿では,ザンビア北西部に暮らすルンダの人びとが実践する「部分どり」と「全どり」というふたつの収穫方法に着目し,農家が地域の生態環境による制約を克服するべく確立してきたキャッサバ栽培の方法を報告する。おもなキャッサバ栽培地域の熱帯雨林帯とは異なり,本稿で取り上げるザンビアでは明瞭な乾季が存在し,キャッサバの生長に時間がかかる。ルンダの女性たちは,キャッサバの種茎を植えつけてから2年が経過した3年目に,肥大したイモのみを選んで掘りとる部分どりを実践する。4年目にはほとんどのイモが肥大し,株ごとすべてのイモを掘りとる全どりがおこなわれる。部分どりと全どりを組みあわせることで,2年にわたってキャッサバのイモを収穫して世帯の食料消費を安定させるとともに,用途に適した大きさや状態のイモを必要量だけ収穫することができている。ふたつの収穫方法はキャッサバの生育段階に応じて実践され,キャッサバの生長に時間のかかる環境だからこそ生まれた収穫技術である。キャッサバはその特性から労力をかけずとも育つとされるが,本稿ではルンダの人びとが環境による制約を克服するように部分どりと全どりという収穫技術を確立していることを明らかにした。