アフリカ研究
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エヤデマイズムの現在
象徴権力の観点からの試論
岩田 拓夫
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2003 年 2003 巻 62 号 p. 57-63

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抄録

サブサハラアフリカ諸国における最長政権となったトーゴのエヤデマ政権は, どのようにして36年間も権力を維持してきたのだろうか。このような問題意識から出発して, 小稿では, トーゴにおいてエヤデマイズム (Eyadémaïsme) と呼ばれる非物質的な要素から構築されてきた権力のあり方に関して, P, ブルデューの象徴権力という概念を手がかりとしながら考察していく。そこでは, 軍や警察による物理的強制力や富の独占的分配によるクライアンテリズムに基づいた物質的な権力を補完・強化してきた, 非物質的な権力様式に注目していく。
概念的検討をふまえた上で, はじめに象徴権力としてのエヤデマイズムの構成に関わる要素である神話化, 名づけ, 宗教, 伝統の再発掘に関する分析と, エヤデマイズムの形成過程に関して考察していく。次に, 1980年代以降のエヤデマイズムのほころびから, 1990年代はじめの民主化プロセスにおけるエヤデマイズムの崩壊の危機と, その後の復活の過程までを明らかにする。
小稿における考察を通じて, サブサハラアフリカ最長政権となったエヤデマ体制の権力構造に関する一つの理解を提示すると共に, アフリカ政治における権力と支配の一側面を考えていく。

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