アフリカ研究
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タンザニアの共同体的土地所有
「1999年村土地法」の考察
雨宮 洋美
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2003 年 2003 巻 63 号 p. 27-36

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抄録

これまでの政策及び制定法における土地に対する権利の整理を踏まえ, 1999年に新しく制定されたタンザニアの「村土地法」に規定される「慣習的占有権」(right of occupancy) の内容を法的に把握し, さらに「村土地法」制定の意義を検討する。
「村土地法」規定の検討から,「慣習的占有権」とは制限のある「使用, 収益及び処分」の権利であり, 家族及び村共同体の利益をも考慮して設けられる権利である, といえる。さらに, 従来, 慣習的にみとめられてきた村共同体の誰もが利用できる土地が「共同体の村土地」(communal village land) として規定されたことも重要なことである。これまで慣習に基づいて運用されてきた土地所有権を, 新法は村土地に関する諸規定および「共同体の村土地」概念導入により, 個別化を一歩進めた「共同体的土地所有」として制定法化したものといえよう。
「村土地法」は, 原則として外国人への土地譲渡を抑制しながらも,「1997年投資促進法」の適用による外国人に対する土地譲渡の道を残している。タンザニアの共同体的土地所有権を制定化する意義は, 共同体的土地所有を市場経済と対峙するものと捉えず, 市場経済化に対し戸を閉ざし続けるわけにいかない現状への活路を見出すために伝統的慣習を世界システムの動向の中に対応させることにあろう。

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