2023 年 14 巻 p. 66-78
地方分権化の影響から、教育拡充におけるコミュニティ参加の有用性と必要性、地域を巻き込んだ学校運営の在り方が模索される。そして、地域を巻き込んだ学校の民主的な運営の重要性が強調されるようになった。一方で、学校に関わる地域の人々には多様な背景があることや、学校へのアクセスが制限される地域ではコミュニティの参加を促すことが難しいという現状がある。特にアフリカの非正規市街地は、コミュニティと学校の協働がある一方、提供する教育レベルが低い学校では教育への理解が得にくいという現状がある。そこで本研究では、なぜ非正規市街地においてコミュニティと学校が協働する必要があるのか、協働するために必要なことは何かを考察する。ガーナ共和国の首都アクラの非正規市街地であるアベセ(Abese)地区を事例として、コミュニティと教員それぞれの視点から調査を行った。調査から、①アベセクランの人々はA校に、高学歴・高収入につながる学校教育を期待しているが、A校にはその期待に応えらえる学校設備などが無い、②A校とコミュニティが意見交換や合意形成をする場が不足していることが明らかとなった。解決策として、チーフを頂点とするクラン社会にあるアベセ特有の強みを活かした学校とコミュニティの関係構築が、A校の教育環境の課題を克服するために有効だと考えられた。