家族研究年報
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シンポジウム報告
ベーシック・インカムとケア
堅田 香緒里
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2018 年 42 巻 p. 21-33

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抄録

    本稿では、私的領域=家庭内で女が一般に担ってきた家事やケアといった不払い労働/再生産労働との関わりから、ベーシックインカムという政策構想について検討する。 第一に、従来の福祉政策が前提/維持してきた標準家族という政策単位に代わって、近年注目されているケアユニットについて概観し、第二に、そうした新たな政策単位に基づいて提案されている政策構想―ケア提供者手当―を取り上げ、それが家事やケア等の不払い労働に対して持ち得る含意と課題を検討する。第三に、そもそも家事やケアのような不払い労働の範囲は同定可能なのかどうかをめぐり、不払い労働の測定ないし経済的評価をめぐる議論を再検討する。第四に、ケア提供者手当の諸課題を克服し得る政策構想の一つとしてベーシックインカムを検討し、最後に、それが依存とケアを中心に据えた社会正義にかなうものであることを論じる。

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© 2018 家族問題研究学会
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