家族研究年報
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シンポジウム報告
投稿論文
  • ―計画経済期と市場経済期に生きる女性たち―
    陳 予茜
    2024 年 49 巻 p. 37-53
    発行日: 2024/07/13
    公開日: 2024/08/29
    ジャーナル フリー

        本稿では市場経済期に生まれた一人娘を研究対象とし、彼女たちが捉えた母親、すなわち計画経済期の女性の結婚について考察した。その結果、以下3 点を指摘することができる。まず結婚の形式からみれば、母娘の間に違いが見られるものの、両者は共に自分と似たような年齢、学歴、民族、戸籍の男性と結婚しており、同類婚の志向を持っている。また配偶者選択の条件については、母娘はそれぞれの時代背景に影響を受けているが、共通項として、母娘は共に男性の人柄、外見、職業の安定性を重視している。最後に夫婦関係においては、娘にとって母親は現実的な条件とともに愛情表現という情緒的な側面も重視しており、娘夫婦にも通じる夫婦関係を有している。このように母親の結婚観に対する一人娘の捉え方を通して、中国の計画経済期における女性の結婚と市場経済期における女性の結婚には先行研究が強調してきた相違点だけではなく、共通点を持つことが確認できた。

  • ―21世紀出生児縦断調査データを用いた検討―
    藤間 公太, 北村 友宏, 竹ノ下 弘久, 陳 テイテイ
    2024 年 49 巻 p. 55-72
    発行日: 2024/07/13
    公開日: 2024/08/29
    ジャーナル フリー

        日本においては、主に人口学の領域で、個人が複数の子どもを持つ背景について検討されてきた。たとえば第3子出生に影響を与える要因として、子どもの性別に関する選好、男性の育児参加度、三世代同居をしていることなどが指摘されている。しかしながら、既往出生児に対する親の教育期待および教育投資が追加出生に与える影響について、出生タイミングを考慮に入れた検討は十分にはなされてこなかった。本稿では、「21世紀出生児縦断調査」の第1回から第15回の個票データを用いてこの課題に取り組む。分析結果は次の通りである。第1に、親の教育期待の高さは、第2子出生、第3出生のいずれに対しても有意な負の効果を示した。第2 に、子どもへの教育投資の多さも、追加出生に有意な負の効果を示した。この結果は、教育期待や教育投資の階層差が子どもの数に影響すること、階層維持戦略をめぐる階層差が存在することを示唆する。

  • ―高学歴女性の短時間勤務制度利用を中心に―
    児島 あゆみ
    2024 年 49 巻 p. 73-90
    発行日: 2024/07/13
    公開日: 2024/08/29
    ジャーナル フリー

        本稿では、共働きの未就学児を持つ高学歴女性を対象にしたインタビュー調査を通じ、女性が食事作りの役割を担う過程を分析し考察した。食事作りの主担当者となった女性たちは,短時間勤務制度の利用を選択する際に、出産後も就業を継続したいのであれば、短時間勤務制度を選択せざるを得ないという状況を定義していた。この判断には、母親が育児休業の後に短時間勤務制度を利用するという職場の慣行の影響がみられた。職場の「子育ては女性がやるもの」という慣習に影響を受け、女性たちは育児責任意識から短時間勤務制度を利用した結果、育児だけでなく食事作りにおいても主担当者となる様子が見いだされた。

研究ノート
  • ―標本バイアスの検討―
    前田 尚子
    2024 年 49 巻 p. 91-108
    発行日: 2024/07/13
    公開日: 2024/08/29
    ジャーナル フリー

        本稿では、1931-1941年農林省「農家経済調査」対象農家世帯の標本バイアスについて報告する。斎藤(2022b) にて、家族形態の標本バイアスの可能性が指摘され、それを確認する方法として、第1回国勢調査および徳川後期東北の宗門改帳を利用した研究結果と比較するという方法が示された。その方法を用いて一橋大学経済研究所によるデータベースに収められた農家世帯の家族形態を検討した結果は以下のとおり。(1) 直系家族システムの典型的な家族周期から外れた世帯はごくわずかである。(2) 直系家族システムの家族周期のなかで夫婦家族の形態をとる世帯の出現率は過小である。これらは労働組織として脆弱な農家が過小であることを示唆している。さらに、(3) 家族規模の標本バイアスには地域差があり、南九州を除く西南地方では比較的大規模な(子どもの数 が多い) 農家世帯が過大である可能性がある。

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