家族研究年報
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シンポジウム報告
  • 藤間 公太, 三部 倫子
    2023 年 48 巻 p. 1-4
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2023/10/13
    ジャーナル フリー
  • ―量的調査を通じた試み―
    平森 大規, 釜野 さおり, 小山 泰代
    2023 年 48 巻 p. 5-25
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2023/10/13
    ジャーナル フリー

        本稿では、これまで筆者らが従事してきた研究を題材に、日本ではまだほとんど進められていない量的調査を通じた性的指向・性自認のあり方(SOGI) と家族研究の可能性を探った。日本の無作為抽出調査においてSOGIを測定する際の課題と測定方法を検討した研究、同性パートナーの有無の把握における課題を検討した研究、回答者のSOGIおよびカップルタイプ(女性間、男性間、男女間) 別に世帯・家族構成やジェンダー・家族意識等について検討した研究という3つの研究事例を提示した。日本では数少ない回答者のSOGIをたずねた無作為抽出調査である「大阪市民調査」およびその準備調査を用いてこれらの研究事例を検討した結果、既存研究の課題を乗り越えるべく、SOGIを分析軸にした家族研究を進めていくことの社会的・学術的意義が示された。

  • 新ヶ江 章友
    2023 年 48 巻 p. 27-43
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2023/10/13
    ジャーナル フリー

        本論では、日本のA市において出産・育児をしたいと考えるレズビアン・バイセクシュアル女性をはじめとする性的少数者が、主に2000年代以降、どのようにして自助グループ「新しいかぞくのカタチ(仮名)」 を形成していったのかを、団体代表のサクラ(仮名) さんの視点から分析する。サクラさんは自分の定位家族との折り合いが悪い中、ある日本人レズビアンが第三者からの精子提供によって子どもを産んだことをインターネット上で知り、自分も子どもが欲しいという思いを強め、同様の思いのレズビアン・バイセクシュアル女性とのつながりを形成していった。結論として、性的少数者であり、かつ子どもが欲しいという状況に対して、「新しいかぞくのカタチ」は、当事者たちが自ら情報収集を行い互いを支援するという、自助グループとしての重要な機能を果たしていることが分かった。

  • ―4報告へのコメント―
    平山 亮
    2023 年 48 巻 p. 45-57
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2023/10/13
    ジャーナル フリー

        質問紙調査において、調査対象者が回答として報告しうる経験の種類や幅は、回答のための選択肢を設定する調査者によって規定される。したがって調査結果として得られた「実態」には、調査者の抱く調査対象者についての想定があらわれている。質問紙調査のそのような特徴を念頭に置いたとき、質問紙調査によって把握された性的マイノリティとその家族の「実態」は、どのように解釈する必要があると考えられるだろうか。 シンポジウムの4 報告をもとに、「実態」の解釈における留意点を具体的に検討するとともに、性的マイノリティとその家族の経験を大規模調査によって把握する上での今後の課題についても言及した。

投稿論文
  • ― 料理や掃除のしかたを教えることに着目して ―
    戸髙 南帆
    2023 年 48 巻 p. 59-74
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2023/10/13
    ジャーナル フリー

        本稿では、子どもに家事を教えることに着目して、性別役割分業意識を平等化する可能性を検討する。「子どもの生活と学びに関する親子調査」のペアデータを用いて、親子それぞれの性別役割分業意識をふまえながら、小学校高学年から中高生の子どもを対象に、母親が家事のしかたを教えるという行為の効果を探った。その結果、女子と比較して、男子は「男性は外で働き、女性は家庭を守るほうがよい」という性別役割分業を支持する傾向にあるものの、母親に家事を教えてもらった経験がある男子ほど、性別役割分業を支持しない傾向がみられた。この傾向は母親の性別役割分業意識などを考慮しても確認された一方で、女子については有意な効果が認められなかった。このことから、子どもが男子である場合、性別役割分業に沿わない家事という行為を教えること自体が、ジェンダー意識を問い直す契機となり、意識の平等化を促す効果をもっていることが示唆された。

  • ―親の外出労働は子どもの「分岐する運命」を生むのか―
    夏 天
    2023 年 48 巻 p. 75-89
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2023/10/13
    ジャーナル フリー

        家族の多様化とその子どもへの影響に関する先行研究からは非婚・離婚などの家族行動は低い学歴層に生じやすいこと、ひとり親世帯の子どもは教育達成が低いことが明らかにされている。中国における親の不在は親の離婚よりも「外出労働」に起因することが多く、その「外出労働」は低い学歴層に生じやすいことから、子どもの「分岐する運命」は「留守児童」経験によって生じていることが予想できる。高校進学以降のトラッキングはその後の社会経済的地位達成を大きく規定するため、本研究は「留守児童」経験とトラッキングの入り口にある普通科高校進学との関連について検討する。China Family Panel Studies(CFPS) データを使用し傾向スコアマッチング法による分析を行った結果、「留守児童」経験のある者は普通科高校に進学しにくいことが明らかになった。「留守児童」経験がライフコース上の長期的な不利を生み出す可能性がある。

研究ノート
  • ―自己の位置づけと心理学・セラピーの影響に着目して―
    栗村 亜寿香
    2023 年 48 巻 p. 91-106
    発行日: 2023/07/15
    公開日: 2023/10/13
    ジャーナル フリー

        本稿では米国における後期近代の愛や親密性の理念を文化的観点から検討する。まず A.ギデンズの親密性論や先行研究の検討から、米国における後期近代の愛の理念の検討にあたってセラピーや自己の位置づけといった文化的側面に着目する必要があることを確認する。次にこの観点から選定した複数の文献をもとに、1970年頃に米国で台頭した愛の理念の特徴とその背景を検討した。その結果、新たな理念の特徴は、男女の自律や平等、交渉が重視され、感情表現や自己開示を通じた親密なコミュニケーション、夫婦間の問題への取り組みに価値がおかれる点にある。また、この理念の形成には1960年代後半頃から大衆的に拡大したセラピー的な運動や、結婚に対する従来の立場を変更したセラピーの動向、第2派フェミニズムが影響を与えている。後期近代の家族や親密性の変容は、社会・経済的、制度的側面だけでなく、文化的側面の検討も重要であることを指摘した。

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