2021 年 46 巻 p. 1-18
現在、日本では女性の就農推進施策が取られている。農業経営主となる女性の事例もクローズアップされ、増加も期待される。これまで女性農業者にとって就農と婚姻はセットであったが、農業を職業として選択する単身若年女性の存在は、その分節化が進んでいることを示唆している。そこで本稿では、「農家の娘」として家業を継承したシングルの女性農業者たちの経営主というキャリアと家族形成における実態や意識について分析し、2 つの側面がどう関係しているのか考察をおこなった。その結果、次の2点が明らかとなった。調査対象者たちが、農業経営主という高いキャリアを望むことができ維持することが可能な「ハンドルを握り続けられる場」として農業を捉えていた点、家族形成を前提とした次世代へ継承する家業ではなく個人の職業として農業を捉えていた点である。経営主となることが困難であり再生産役割を期待された女性と農業の関係に変化がみられている。