地球科学
Online ISSN : 2189-7212
Print ISSN : 0366-6611
西南日本の遠洋性堆積物中のペルム-トリアス紀境界と炭素循環(<特集>地球における炭素の循環)
石賀 裕明
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

1994 年 48 巻 4 号 p. 285-297

詳細
抄録

西南日本の層状チャートシークエンス中にはペルム-トリアス紀境界が記録されている.この境界は層状チャートから珪質粘上岩に移化する岩相の変化によって特徴づけられる.この珪質粘上岩には厚さ数十cmにも達する黒色有機質泥岩が挟まれる.この岩石は厚さを減じるとともに,産出頻度も次第に低下するものの,上位のトリアス紀古世珪質岩にも周期的に挟まれる.この有機質黒色泥岩は海洋植物プランクトンに由来する有機物を含み,基礎生産が高かったことが推定される.下部トリアス系の黒色有機質泥岩には黒色チャートが規則的にともなわれることがあり,ペルム-トリアス紀境界で放散虫が絶滅した後の回復に,基礎生産の高い海洋が放散虫のブルーミングに与えた影響は大きいといえる.ペルム紀末の大量絶滅の原因の一つに,一般に考えられている世界的な海退のほかに,古テーチス海東縁に連続した大陸が配列し,古テーチス海とパンサラッサ海とが隔離されたことが指摘できる.そのため海洋循環の悪化および基礎生産の高い古テーチス海の海洋浄化機能の低下が生じたといえる.この大陸の鎖はペルム-トリアス紀境界には切断され,海洋環境の回復とともに爆発的な基礎生産が起こったと考えられる.

著者関連情報
© 1994 地学団体研究会
前の記事 次の記事
feedback
Top