地球科学
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水質から見たトゥファ堆積場での現象 : 岡山県北房町の例
狩野 彰宏井原 拓二中 孝仁佐久間 浩二
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1999 年 53 巻 5 号 p. 374-385

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抄録

1997年12月から1999年3月までの期間,毎月1回行った水量・水質の測定結果をもとに,岡山県北房町のトウファの堆積機構と化学現象の季節変化について考察した.トゥファが堆積している沢水は石灰岩層の地下水系から湧出したもので,高濃度で炭酸カルシウムを溶存している.湧出した水は沢を流れる間に,二酸化炭素を脱ガスし,方解石に対する過飽和度を増し,トゥファを沈殿させる.融水口での水質の測定結果は,地下水系での水のアルカリ度・Ca濃度・平衡二酸化炭素分圧がいずれも夏〜秋に高く,冬〜春に低い事を示した.これは,地下での石灰岩溶解量を支配する土壌大気中の二酸化炭素分圧の季節変化に対応していると思われる.また,トゥファの堆積量と堆積効率は夏〜秋に高く,冬に低い傾向があり,この傾向は水温と炭酸カルシウムの活量積に正の相関を持つ方解石の無機沈殿速度の季節変化で説明できる.これらの水質や化学現象の季節変化は日本の他のトゥファ堆積場と共通している.水質・水量から計算すると,岡山県北房町の沢では年間約2.9トンの方解石が堆積し,これは湧水に含まれていた溶存炭酸カルシウムの約14.6%に相当する.

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© 1999 地学団体研究会
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