2003 年 57 巻 6 号 p. 343-355
1990年に刊行された「日本の地質-北海道地方」は,広大な北海道の地質を総括したものとして,その有用性は依然として高い.しかし,その後多くの情報が新たに集積しており,層序学的な位置づけが変更されたり,再定義された地層も少なくない.そこで本論では,最近の微化石による研究の発展傾向を紹介するとともに,1990年以降の北海道の新生界の生層序学的研究成果を総括して文献リストを作成した.また,今後の課題と展望として以下の2点を指摘した.1)北海道周辺海域の地質情報はさほど多くなく、陸域とコア資料との対比も十分ではない.したがって,今後海域の新生界の研究にも力を入れ、さらに詳細に陸域との対比を行うことで,北日本の成り立ちをより詳細に解明することができると期待される.2)北海道では,珪藻を用いた研究が多いが,それに比べて他の微化石を用いた研究は少なく,異なるタクサによる年代学的クロスチェックの増加が望まれる.