地球科学
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西南日本,日野川の河川堆積物の地球化学 : 源岩の諸特徴,流下に伴う組成変化,及び分級と風化の影響
オルティス エドウィンロザー バリー
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2006 年 60 巻 2 号 p. 131-146

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抄録

鳥取県日野川の河川堆積物は,地球化学的に異なるこつの地質ユニットに由来する砕屑物の痕跡を留めている.主要な集水域から採取された101の試料について,2つの粒子サイズ(180μm以下と180-2000μm)に分けて主・微量成分蛍光X線分析を行った.主要な集水域は花崗岩類や珪長質火山岩類から構成されているが,小規模ながら源流域には塩基性〜超塩基性岩が,また下流域にはアダカイト質の大山火山岩類が広く分布する.上流域では塩基性〜超塩基性砕屑物の供給がCr, Ni, V, TiO2, Fe2O3,MgOに富む原因となる.これらの濃度は流下につれ,花崗岩からの砕屑物の供給によって薄められ,減少していく.この効果はCr/V比によってよく表されており,この比は最初期の超塩基性砕屑物の供給以降は着実に減少していく.花崗岩由来砕屑物の供給は,特にTh, Ce, Y, Zr濃度の増加によって特徴づけられる.下流域における大山由来砕屑物からの影響はSr, CaO, Na2Oの顕著な増加とYの減少によって特徴づけられる.堆積物組成への風化や分級の効果もまた源岩の影響についで,認められる.珪長質火成岩類由来の砕屑物は,大山に起源をもつもの以上に粒子サイズの違いによる影響の方が大きい.源岩の風化の影響も大きいが,それは全体として中程度である.日野川堆積物の化学組成は,源岩の岩石種の違い,それらの付加による希釈の効果,分級や風化の違いによる影響を明らかに受けている.

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© 2006 地学団体研究会
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