地球科学
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アダカイト研究の現状と問題点 : アダカイト質岩の多様性の成因とその地質学的意義(<特集>日本列島における白亜紀アダカイト質花崗岩類の起源)
土谷 信高
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ジャーナル オープンアクセス

2008 年 62 巻 3 号 p. 161-182

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抄録

花崗岩質大陸地殻の形成機構を明らかにすることは,地球の進化過程の解明に通じる重要な研究課題である.大陸地殻の形成機構の解明の鍵を握る重要な岩石であるアダカイトについて,これまでの研究の現状をレビューした.その上で,北上山地のアダカイト類の岩石化学的多様性の原因を検討した結果,スラブメルトとマントルおよび下部地殻との反応の程度の差が主要な役割を果たしており,スラブウィンドウ由来の肥沃なマントル物質の関与も影響していることが明かとなった.すなわち,ほぼ初生的なスラブメルト,スラブメルトが主として下部地殻の角閃岩と反応したもの,スラブメルトとマントルかんらん岩とが軽度に反応したもの,スラブメルトとマントルかんらん岩とが平衡に近くなるまで反応したもの,スラブメルトに汚染されたマントルかんらん岩の部分溶融によって形成されたものを区別することができた.北上山地のアダカイト類の岩石化学的多様性は,スラブメルトの発生から上昇・定置にいたる現象の解明に重要な位置を占めると考えられる.

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© 2008 地学団体研究会
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