2010 年 64 巻 1 号 p. 1-9
群馬県西部に分布する中部更新統,嬬恋層群は主に溶岩,火山砕屑物および湖成・河川成堆積物からなり,多くの降下テフラを挟む.今回,四阿火山の南東麓地域に分布する嬬恋層群中から角閃石を多量に含む3層の軽石質降下テフラ(KRP,SKP,KKP)を見出した.層序および記載岩石学的性質,EDSによる角閃石の化学組成値に基づき,これらの3層のテフラと古期御岳火山起源のStPm,KbPm-I,II,IIIとの対比を試みた.その結果,KRPがStPmもしくはKbPm-Iに,SKPはKbPm-IIもしくはIIIにそれぞれ対比され,StPm,KbPm-I,II,IIIは古期御岳火山の北東方向に広く分布することが明らかになった.これらのテフラは詳しい噴出年代が推定されているので,中部日本における中期更新世の編年学的研究のための重要な鍵テフラ層になると考えられる.