2015 年 69 巻 5 号 p. 255-266
福島第一原子力発電所のシビアアクシデントから,4年余りが経過した.事故は東北日本太平洋沖地震と津波に起因していた.巨大な地震と津波をもたらした機構は,まだ多くの科学者によって調査され,解析されている.こうした状態にあるにもかかわらず,各地の原子力発電所は,その廃炉を求める人々の願いに反して,再稼働されようとしている.本稿では,原発の耐震安全性にとって最も重要な基準地震動の策定や,その基礎になる活断層の認定の問題点について検討した.地球科学に携わる者は原子力発電所の耐震安全性について積極的に貢献しなければならない.災害が頻繁に発生する今日,住民は原子力発電所の安全性を脅かす地震や火山に大きな不安を抱いている.私たちは,住民や市民の生命と安全を守る立場から,地域の地質や地下構造,活断層,火山活動について,住民や市民と共に研究を進めなければならない.