2019 年 73 巻 2 号 p. 103-110
北海道の奥尻島には白亜紀,古第三紀,新第三紀,第四紀の堆積岩類や火山岩類が分布する.北海道の離島で,最も地質の多様性に富んだ島である.島の海岸部では,花崗閃緑岩,火山岩(玄武岩,安山岩),火山砕屑岩,貫入岩(ドレライト,石英ひん岩)などの岩石が海岸に露出し,差別的風化・浸食作用を受けて様々な奇岩を作り出した.奥尻島の奇岩の原岩の形成年代は,年代層序学的資料や放射年代測定値に基づいて,3層準に区分することできる.これらは白亜紀の花崗閃緑岩,新第三紀中新世中期の火山岩・火山砕屑岩・貫入岩および鮮新世の火山岩・火山砕屑岩・貫入岩である.奥尻島の奇岩に関する伝説・伝承の多くは島に由来を持つものだが,義経伝説と関連するものも存在する.このような文化地質学的なアプローチは,今後奥尻島のジオサイトの活用においても有意義である.