抄録
CO2施用しない条件下で検討された,トマトのロックウール養液栽培における作物吸水量にもとづいた養分量管理の日施用法が,作物の成育や養分要求量が変化するCO2施用条件下にも適用できるか否かについて,慣行の培養液電気伝導度 (EC) にもとづくかけ流し式管理と比較することで検証した。また量管理の日施用には,新規に開発した量管理コントローラ親機および子機のプロトタイプによる自動量管理システムを用いた。量管理処理区は,3日間の平均吸水量あたりの養分施用量を,CO2施用しない条件下で最適とされる養分施用量の0.5倍 (S区) ,1.0倍 (M区) ,および1.5倍 (L区) の3処理区とした。栽培試験は高軒高温室において2009年10月から2010年2月にかけて行った。栽培期間中の積算総果実収量は慣行のEC管理区において最も高く,次いでL区,M区,S区の順に高かった。他方,積算正常果収量はEC管理区,L区,M区との間に有意な差はみられず,S区においてのみ有意に低かった。量管理処理区における果実乾物率や果実糖度は,EC管理区におけるそれらと同程度かあるいは高かった。量管理処理区において栽培期間中に培養液として使用した無機成分量はEC管理区よりも少なく,S区,M区,およびL区においてそれぞれEC管理区の10,24,および42%であった。量管理3処理区における無機成分利用効率 (無機成分使用量あたりの積算正常果収量) はいずれもEC管理区におけるそれより高かった。以上より,養分量管理の日施用法はCO2施用条件下においても収量や収穫物品質を低下させることなく養分使用量を削減しうることがわかった。本研究の条件下では,正常果収量はL区の方がM区よりも幾分高かったことから,正常果収量をわずかでも高めたい場合にはL区が,また無機成分利用効率を高めたい場合にはM区が,それぞれ適しているものと判断された。