抄録
以上数項にわたつて, 我々は温水池上を吹く風の測定データーをもとにして Fetch 75m の閉水面上に2次的に誘起された接水気層 (z=75cm) の風速分布を求めた。そして大きな気層安定度の存在にも拘らず, 風速分布はほぼ対数法則を満足することがわかつた。この分布をU=0まで外挿することによつて水面の表面粗度をえた。z0とU200とをプロットするとz0はU200=200~300cm/sec にて急激な増加を示し, その後も風速とともに次第に大きくなる傾向を示した。U200<100cm/sec では水面は空気力学的に滑面, U200>200cm/secでは粗面, その中間では転移状態にあることがz0V*/vなる臨界値の計算からわかつた。風速分布が対数法則に従うことから摩擦応力, 摩擦速度, 摩擦係数を求めた。そして次のような関係をえた。
τ0∝U2.78
V*∝U1.39
C∝U0.78
これらの関係は Francis, Hay, Munk 等の実験的, 理論的研究の結果と大体一致するものである。
うえの関係を用いて下のように規定される熱伝達係数
h=cp・ρ・κ・α・V*(lnz+z0/z0)-1
を計算すると
h∝U1.39
となりは風速の1.39乗に比例して増すことが予測され, これは次報に詳細に説明される予定の温水池水面上の熱伝達係数の実測値と風速との関係を大体よく満足した。