農業気象
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水稲の倒伏に関する研究 (6)
倒伏水稲の炭酸同化と同化産物の移行について
小林 宏信氷高 信雄
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1968 年 24 巻 1 号 p. 15-23

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抄録

水稲の倒伏にもとづく減収要因のうち, 主要な一つであると考えられると同化障害を明らかにするために, ポットに栽培した水稲コミヒカリを乳熟期に挫折倒伏させた。倒伏後3日目に無遮光および遮光条件下で14CO2を同化させ, 同化産物の稲体内における分布および移行状態を正常稲のそれと比較した。また株起し効果についても検討した。
無遮光条件下における14CO2の同化蓄積量については, 葉身, 葉鞘, 稈, および穂部等の器官の種類あるいはその着生位置によつて差があるが, いづれの部分も挫折倒伏稲は正常稲に比して著しく少なかつた。株起し稲の同化量は, 正常稲に比して少ないが挫折倒伏稲に比してかなり多く, 同化障害の軽減効果が認められた。遮光条件下での同化量は, いづれの稲も無遮光条件下の場合に比して著しく少ないが, 上記と同様な傾向が認められた。
同化産物の穂えの移行蓄積量は, 両光条件下とも正常稲>株起し稲>挫折倒伏稲であり, その移行率は正常稲≅株起し稲>挫折候伏稲であつた。一方同化産物の体内分布をみると, 正常稲および株起し稲に比し, 挫折倒伏稲では葉身および葉鞘に多く, 倒伏により同化障害が生ずると同時に同化産物の転流移行に障害が生ずることを認めた。
次に挫折倒伏稲では, 挫折点から上部で作られた同化産物の下部への転流量が正常稲に比して著しく少なく,株起し稲では中間であつた。
以上の結果から, 挫折倒伏稲は同化機能が低下すると同時に同化産物の移行転流が阻害されて減収するといえ, 株起しはこれらの障害を緩和する効果があると結論できる。

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