農業気象
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ガラス室の気象 (2)
放射ならびに湿度環境について
岩切 敏
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1969 年 24 巻 4 号 p. 185-191

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抄録
1966~67年冬季に農業技術研究所ガラス室で行なつた微細気象観測資料をもちいて室内外の放射環境, 湿度環境の比較と内外気象資料による内部環境予測の経験則と理論式について検討した, それはつぎのように要約される:
(1) 室内純放射量を規定する重要な要因は屋外日射量と透過係数であり昼間の放射収支において長波放射項は完全に無視できる。また透過係数の決定にあたつては光要因とガラス室の構造要因の影響を区別するために室内外の直達, 散乱放射の分離測定が望ましい。
(2) ガラス室内外の放射測定資料からつぎのような経験則がえられた。
iR=0.570R, 0R≥50 (ly/day) (3)
iSd=-14+0.500R (ly/day) (4)
iSd=-8+0.87iR (ly/day), (5)
iS=-2+0.97iR (ly/hr), (7)
ここでiR, 0R; ガラス室内外全短波放射量; iSd; 昼間積算室内純放射量; iS; 単位時間当り室内純放射量; α; 床面アルベド。(3) 式はガラス室の平均的透過係数が0.57であることを, (4), (5)式は0R, iRの測定から室内純放射量の推定が可能であることを, (7)式はiSが床面吸収短波放射量にほぼひとしいことを示している。(7) 式の関係からえられたガラス室の Heating Coefficient γは0.03となり, 野外条件下のそれの8~14%程度のきわめて小さい値である。このように純放射量中にしめる能動面加熱に費やされる長波放射の割合が野外にくらべて小さいのはガラス室内壁面から下向きの長波放射があるため見かけ上γが減少していることによるものであり, ガラス室等の放射環境特性の1つである。
(3) ガラス室の湿度環境は床面での顕潜熱伝達量とその配分比, 並びに換気率に依存しているが, とくにその日変化の振巾比は換気率を一定とするとボウエン比のみの関数としてあらわされる。湿度環境の特性は水蒸気圧力や相対湿度よりも飽差で表現したほうがよりはつきりする。本実験で使用した無栽植密閉ガラス室では飽差の内外差は10mmHg以上にも達した。
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