抄録
ガラス室内部環境の予測と制御に必要な基礎資料をうることを目的として1966年11月から'67年4月にかけて無栽植密閉ガラス室の微細気象観測をおこなつた。第1報としてとくに室内外気温の比較検討をおこなつたが, それはつぎのように要約される:
1) ガラス室内最高気温の出現時刻は屋外気温のそれとほぼ一致し位相のずれはみられない。最高気温の内外差と放射との間には直線関係がえられ, 最高気温と日射量の気候資料から室内最高気温の近似的推定ができる。
2) 最低気温は外気温にくらべて平均1~2℃高く, 内部気温が外気温より低いという現象は極めてまれにしかみられなかつた。日平均気温の内外差は2~6℃の範囲にあり, 室内気温の日較差は10~25℃に達した。内外気温の振巾比, 日平均気温の内外差と屋外日射量との関係が求められた (第5図参照)。
3) 夜間の室内気温降下度と外気温の降下度との直線関係, 平均夜間放射フラックスとの2次曲線的関係がえられた (第6図参照)。室内気温の地上数10cm以上の高さでの温度傾度は昼夜ともに小さい。
4) 簡単な放射バランス式から床面温度と内壁面温度の差を計算し, よく晴れた夜間には6~7℃であることがわかつた。これは床面温度と外気温の差に近い値であり, 外気温と内壁温の差が非常に小さいことを示している。
5) ガラス室全体の熱収支式を基礎として内部気温日変化の式を導き, 平均気温, 気温日変化の振巾についてえられた経験則との対応を検討した。しかし基本的パラメータについての十分な実験データがえられなかつたため, 実測値との比較をおこなうところまでいかなかつた。