農業気象
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冬季畑地灌漑に就いて
石橋 豊
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1947 年 3 巻 1 号 p. 5-8

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抄録

この調査により知り得たところを要約するに
1) 湧出水の温度は常に11.0℃以上にある。
2) 流下による温度低下は概略距離350mに對し2.0℃程度である。
3) 灌漑用水の温度は10.0℃以上, 低くとも9.0℃以上にある。
4) 灌漑畑地の地温は配水状態良好な時は深さ10cm20cmともに9.0℃以上に, 深さ30cmは10.0℃以上に保たれて居る。然し配水状態良好な時はそれに從い地温も低くなる。
5) 無灌漑の普通畑地では深さ10cmで0.0℃以下となり, 深さ20cmで0.0℃に達し, 深さ30cmで1.0℃近くまで低下する。
6) 灌漑畑地では降雪に際し雪を殘さず又降霜を見ない.
7) 水掛菜は終始生長を續けて居る.
以上こゝに温度を中心として調査した冬季畑地灌漑の農業水利的或は農業氣象的意義を栃木縣上都賀郡日光町野口に於ける水掛菜栽培に就て記したが, (1) 土壤が滲透性に富む砂質であること, (2) 11.0℃内外の用水 (湧出水) を得ること, (3) 導水の距離が概ね500mの範圍内にあること, (4) 配水に充分な注意をすること等がこの基礎となつて居ると認められ, 若しこれ等の諸條件にして惠まれるとすれば, 又同樣に水掛菜の栽培が自ら期待されると思われ, 或は更に水掛菜以外の冬季作物に就てもよりよい環境を齎らすであろうことが期待される.

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