農業気象
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沖縄におけるパインアップル畑の蒸発散量について
城間 理夫
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1974 年 30 巻 3 号 p. 91-100

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抄録
沖繩において2年余にわたって, パインアップルの植付けから収穫までの各時期の蒸発散量の測定を行なった。測定はスムースカイエン種の10本の苗を10a当り4,000本の栽植密度で植付けたライシメーターを使い, 水収支法により行なった。実験はパインアップルの圃場内と, 周囲に芝生や建物のある大学構内とにおいて別々に行なった。かん水は毎月各旬の初めに行ない, 基準かん水量は1回に50mmを与えた。本実験で得られた蒸発散量の値は沖繩においてかんがいが十分に行なわれた場合の圃場からの蒸発散量にはかなり近い値になっていると思われる。結果を要約すると次のとおりである。
1. 植付後最初の12ケ月間の蒸発散量は2つの実験においてそれぞれ721mmおよび684mmであり, これらは植付後最初の24ケ月間の蒸発散量のそれぞれ59%および62%に当っている。旬平均の蒸発散量の最大値は苗を植付けた翌月に測定され, その値は4.4mm/dayになっている。
2. 蒸発散量は植物体の葉面積指数が増加するにつれて減少する傾向が見られた。すなわち, 本実験で植物体の生長が順調に引続いて起こった5月から同年10月初めまでの資料について, 両者の関係を求めた結果 (4) 式の関係が得られた。
3. この作物の生育中期および末期においては, 月平均蒸発散量と気温および水平面日射量との間の各相関係数はそれぞれ+0.91および+0.82であり, また, 同じ生育期における気温と水平面日射量との間の相関係数は+0.73になった。蒸発散量と気温および水平面日射量との間の各偏相関係数を求めると, それぞれ+0.80および+0.55であり, 統計的検定の結果, 蒸発散量と気温との間にはかなりの相関が認められたが, 蒸発散量と水平面日射量との間の相関はそれほど大きくはないと思われる。
4. Ekern がハワイで行なった蒸発散量の測定の例と比較すると, 月平均値の最大値と最小値とについては大きな差は見られなかった。苗の植付後最初の12ケ月間の蒸発散量は, ハワイでは約649mm, 本実験ではそれぞれ721mmおよび684mmになっている。沖繩においては植付後最初の冬の各月の蒸発散量は同じ時期のハワイにおける値よりも小さくなっている。また, この冬に続く最初の夏は沖繩における値の方が大きくなっている。このような差があるのは, 主に両地における気候に相違があるためであると思われる。
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