気象パラメータを使って蒸発散を推定する式では, パラメータ間の相関は無視されている。熱収支から得られる平衡蒸発散について, パラメータ間の相関の効果を水田上の観測値を使ってパラメータの平均時間が10~200日の期間についてしらべた。
平衡蒸発散については, 影響するパラメータ間の相関は飽和水蒸気圧の温度微分と温度の鉛直勾配の間の相関だけであり, これは温度とその鉛直勾配の相関であらわすことが出来る。両者の間の相関係数が大きくなければ, 平衡蒸発散の式は形を変えず, 単に飽和水蒸気圧の微分が相関係数に依存した係数との積の型になる。この係数は相関がない場合にのみ1となる。
水田上での温度, 湿度, 放射, 風速の観測値から日平均の温度鉛直勾配を求め, 温度との相関係数を計算した。平均時間10日に対しては, 相関係数の値の確率分布は相関の無い母集団からのものとほとんど等しかった。平均時間30日については, 相関係数は負になる傾向があった。
100日以上の平均時間では明らかに相関は負になることが示された。
平衡蒸発散の日量を或る期間積算したものと, その期間の平均気象値から得られる平衡蒸発散の比は, 相関係数から計算されるものと十分よく一致した。なお, 相関の効果は平均時間100日について約5%以下であった。