主要な大気汚染物質であるNO
2およびO
3の単一あるいは混合ガス暴露下における植物のNO
2およびO
3収着の機構を調べるために, 制御された環境下でヒマワリを用いてガス暴露実験を行ない, ガス収着速度, 蒸散速度, 葉温等の経時変化を測定した。そして, 簡単なモデルによりガス収着の機構についての解析を行なった。得られた結果は次の様に要約される。
(1)NO
2,O
3単一あるいはNO
2+O
3混合ガス暴露により, 気孔の閉鎖および葉面に可視害の発現する現象がみられた。これらの現象発現の程度は, ガス濃度が高い程顕著であり, また, 暴露ガスの組成により異なっていた。NO
2およびO
3単一ガス暴露の場合について, これらの現象が発現し始める濃度を比較すると, NO
2濃度の方が, O
3濃度よりも10倍程度高かった。また, NO
2+O
3混合ガス暴露の場合には, 単一ガス暴露でこれらの現象が認められない低濃度域において現象が生じるという複合汚染効果”が認められた。なお, SO
2を含めた可視害発現および気孔閉鎖に関するNO
2,O
3, およびSO
2の害作用の程度は, O
3>SO
2>NO
2であった。
(2) NO
2およびO
3の単一あるいは混合ガス暴露に伴う
Q/w′と
Paとの間には,
QNO2/
w′≅1.4×10
-3・
PNO2a,
QO3/
w′≅1.5×10
-3・
PO3aの関係が成立した。この関係は, 植物の被害発現や暴露ガスの組成に影響されなかった。また, この関係は, モデル
Q/w′=(kw/kg・kr)・(Pa-Pl)において,
Pl=0 volppm として得られる式にほぼ一致した。
以上により, NO
2およびO
3についての植物側界面での境界条件としてのガス濃度は, 0 volppm と仮定でき, NO
2およびO
3のガス収着速度が, 境界層抵抗や気孔抵抗等の気相での拡散に関与する因子に支配されることが明らかになった。
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