農業気象
Online ISSN : 1881-0136
Print ISSN : 0021-8588
ISSN-L : 0021-8588
熱帯乾季の水田蒸発散
高見 晋一オトゥール ジェーシー
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 39 巻 3 号 p. 191-200

詳細
抄録

熱帯の乾季かんがい稲作における蒸発散および植物体水分状態に関しては信頼できるデータが少い。そこで我々は1979年乾季に国際稲研究所の水田において蒸発散, 葉身水ポテンシャルおよび気孔抵抗を測定するとともに, 微細気象観測を行った。試験区の一部には孔隙率50%の防風垣を設置して, 微細気象の改変を試みた。
蒸発散, 葉身水ポテンシャルおよび気孔抵抗はあい関連しながら, 微細気象環境の変化に伴って特徴ある日変化を示すことが認められた。防風垣によって特に植被上の飽差が低下し, その結果, 日蒸発散量は対照区より20%減少した。
組合せ法によって推定した蒸発散量はマイクロライシメーターによる測定値とよく一致した。また, この蒸発散量は組合せ法によって見積ったポテンシャル蒸発散量の約82%であった。従って, 熱帯の乾季条件下では水田においても植被抵抗がかなり重要であると考えられる。なお, 本実験の条件下では移流に伴う下向きの顕熱フラックスが水田熱収支上, 重要であることがわかった。そのため, 全生育期間を通じた平均的な蒸発散量は純放射当量の約1.5倍となった。

著者関連情報
© 日本農業気象学会
前の記事 次の記事
feedback
Top