抄録
目的: HIV感染者の歯科診療における連携に関して仙台, 東京, 名古屋, 大阪, 福岡のブロック拠点病院地区の一般歯科医院にアンケート調査を行い, 患者の受け入れを阻害する要因について検討する.
対象・方法: HIV感染者の歯科治療, 院内感染対策について共通のアンケート用紙作成. 各地域の一般歯科医院に郵送し, 得られた回答1,462件を分析した.
結果: HIV感染者が受診した時の対応について, 332名 (23.8%) の歯科医師が行うと回答した. しかし, 1,011名 (72.5%) は拠点病院を紹介すると回答し, 断るとの回答も51名 (3.6%) に認めら回答し. 治療困難な理由としては, 院内感染対策が不十分であるとの回答が圧倒的に多く, その他歯科治療に対する情報不足, スタッフが嫌がるなどが上られた. 院内感染対策について, 48.9%の歯科医院ではマニュアルが作成されていなかった. ハンドピースの滅菌については, 全ての患者に行うと回答した歯科医院は256 (18.6%) であった. 診療時の手袋の装着について必ず装着するとの答えは, 795 (57.0%) であり, 年齢の上昇とともに装着率も低下した.
結論: 今回の結果から, 院内感染対策の不備, 歯科治療に対する情報不足が, HIV感染者の歯科治療を困難としており, 今後, スタンダードプリコーションの徹底, HIV歯科医療に対する情報の公開, 拠点病院を核とした研修, さらには行政側からの経済的支援が連携を進めていく上で必要であると思われた.