抄録
目的: 我が国の若者のエイズやエイズ患者に対する多様な意見を収集し, そのデータをKJ法を用いてボトムアップ的に分類した. KJ法の結果に準拠する形で, エイズに対する肯定的, 否定的態度を測定する態度尺度を作成し, その態度構造について検討を加えた.
対象及び方法: 調査Iでは, 大学生, 短大生, 専門学校生を対象に, 自由記述法を用いてエイズについてのイメージを尋ねる調査を実施した. 最終的に60名 (男性28名, 女性32名) のデータをKJ法による分析に供した. 調査IIでは, 大学生205名 (男性138名, 女性67名) を対象に, 作成された態度尺度を用いた調査を行い, 因子構造について検討を加えた.
結果: KJ法の結果より, 疾病のイメージ, 患者のイメージに関するカテゴリーが示された. 因子分析 (最尤推定法, バリマックス回転) の結果, 行動面で患者を避けようとする「忌避的態度」, 逆に援助しようとする「支持的・援助的態度」, 疾病及び患者に対する否定的な信念や認知を表す「偏見的態度」の3因子が得られた. また男性の方が女性に比べ, 有意にエイズに対して否定的な態度を有していた.
結論: KJ法の結果と因子分析の結果は対応するものであった. 以上より, エイズに対する肯定的な態度と否定的な態度の両者が態度構造の中に並存することが示唆された.