抄録
目的: カウンセリングがエイズ抗体検査前後の不安に及ぼす影響の分析を通して保健所におけるエイズカウンセリングの意義を検討する.
対象および方法: 平成10年11月から1年間にエイズ抗体検査を千葉市保健所で受け, 陰性結果告知後に了解が得られた87名 (平均年齢32.6±11.4歳) を対象とした.検査前から告知後までの不安レベルの変化について, 不安のない状態を0, 最も高い状態を10とした尺度で評価し, 検査日にカウンセリングを受けた群と受けなかった群とで比較検討した.
結果: カウンセリング群の検査前の不安レベルは, 非カウンセリング群と比較し有意に高かった.カウンセリング群の不安レベルは, カウンセリング後に有意に低下した.両群ともに, 抗体検査の結果待ちの間の不安レベルが, 最も高かった.
結論: (1) エイズ感染不安が強く, カウンセリングを積極的に利用しようとする保健所抗体検査受検者の存在が明らかになった.(2) カウンセリングが不安を軽減する効果があった.(3) エイズに対する関心が高まっている抗体検査時にカウンセリングを行うことにより, 感染予防につながる行動変容をもたらす効果を期待できる.