抄録
目的: 消炎酵素製剤として臨床使用されているPronaseの主要成分であるメタロエンドペプチダーゼーF (Metalloendopeptidase-F, MEP-F) のin vitroにおけるHIV-1感染に対する影響を解析する.
方法: HIV-1/LAI及びAD8株を種々の濃度のMEP-Fで処理し正常ヒト末梢血単核球 (PBMC) PHA幼若化細胞 (PHA-blast) を標的細胞として中和活性を検討した. 更に, MEP-Fの存在下でHIV感染細胞のp24抗原産生について検討した. また, MEP-Fの標的細胞に及ぼす影響についてFACS解析を試みた.
結果: HIV-1をMEP-Fで処理することにより正常ヒトPHA-blastに対する感染力の低下が認められた. また, PHA-blastにHIV-1/LAIを感染させMEP-F存在下で培養したところ, p24抗原産生が強く抑制された. 更に, PBMCをMEP-Fで処理し, HIV-1/LAIを感染させた場合, p24抗原産生が抑制された. 正常ヒトPBMC表面マーカーに対するMEP-Fの影響をFACSで解析すると, MEP-F処理によりCD3陽性T細胞でCD4, CXCR4発現細胞数の低下が認められた.
結論: MEP-FはHIV-1及び宿主細胞表面のウイルスレセプターに作用し, 抗HIV-1作用もたらす可能性が示唆された.