抄録
目的: わが国のエイズ診療拠点病院におけるHIV/AIDS患者の診療担当医師を対象としたHIV/AIDS患者の届出状況の調査と届出に影響を及ぼす因子の解析.
方法: 1999年12月31日時点でエイズ拠点病院として公表されている387施設の391診療科の医長を通じて, HIV/AIDS患者の診療を担当する医師を対象に匿名の調査票を配布し, 郵送にて回収した.
結果: 224診療科 (57%) から調査に協力が得られ, 配布された調査票704枚の内681枚 (9796) が返送され, 有効回答数は642枚 (9196) であった. 診断経験があった者は341名 (5396) であった. 診断経験を有する者の8096以上が届出を全て実施していた. HIV感染者の届出は感染症予防法施行後に上昇していたが, 転症報告の届出は変化がなかった.「他科へ紹介したから」及び「紹介元が届けたはず」が届出を行わない主な理由であった. 診療科が内科または小児科以外の医師はHIV/AIDS患者の届出及び転症報告の実施がやや不十分な傾向を認めた.
結論: わが国のHIV感染者数の報告数は実態をかなり正確に反映していると考えられる. 感染症予防法施行後は届出実施割合が高くなったが, 転症報告は義務から任意に変更されたことによって, 今後転症報告の報告漏れが増加する可能性がある.