日本エイズ学会誌
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bis-tetrahydrofuranylurethane (bis-THF) を含む新規のプロテアーゼ阻害剤UIC-94017/TMC114の同定と抗HIV活性の検討
〓 康博Arun K. Ghosh満屋 裕明
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2005 年 7 巻 1 号 p. 17-22

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抄録

目的: 多剤併用療法 (HAART) がHIV感染症の治療に成果を挙げる一方で薬剤耐性HIV株の出現に基づく治療失敗例が増加しており, 耐性変異株に有効でかつHIVの耐性獲得に抵抗する新規の抗HIV剤の開発が急務となっている. 我々はbis-tetrahydrofuranylurethane (bis-THF) を含む新規のプロテアーゼ阻害剤 (PI) UIC-94017/TMC114を同定, ウイルス学的・薬理学的・結晶解析学的検討を行った.
方法および結果: MT-2細胞を用いたMTT assayでは, UIC-94017はHIV-2を含む広いスペクトラムのHIVに対して (IC50値: 3-6nM), また試験管内で誘導した複数のPI (SQV, IDV, NFV, RTV) 耐性変異株に対して (IC50値: 3-29nM) 高い活性を発揮した. PHA-PBMを用いたp24 assayでも, 複数の逆転写酵素阻害剤およびPIsに対して高度の耐性を有する多剤耐性臨床分離株に対して高い抗HIV活性 (IC50値: 3-4nM) を発揮した. 結晶構造解析では, UIC-94017はプロテアーゼの主要な活性部位であるAsp-29とAsp-30の主鎖と極めて強固な水素結合を形成していることが明らかとなった.
結論: UIC-94017は薬剤耐性HIV感染症例での治療剤として有望であると思われる.

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