抄録
目的: 就労というHIV陽性者の社会生活上重要な一側面に着目し, 就労にたいする認知と対処, その要因を聞き取り調査の結果から分析する.
対象および方法: 性行為によってHIVに感染した都内NPOケアサービス利用者を対象に, 機縁法によって3名を分析対象として選出し, 病の経験を聞き取るインタビュー調査を実施した.
結果: 現在の職場環境のみならずHIV陽性が判明したときの身体状態や年齢, HIV陽性告知以前の社会的役割意識などの要因が, HIV陽性者の就労の認知や対処に影響を与えているということが考えられる.
結論: HIV陽性者の就労支援は, 加齢や身体状態の変化, 差別の予期不安に焦点を当てると同時に, 本人の社会的役割意識を視野に入れた対応が必要である.