抄録
1996年のバンクーバー会議が, 「エイズ治療 (HAARTの確立) 」の歴史的転換点となったと同様に, くしくもその10年後に開催されたトロント会議は, 「エイズ制圧に対する戦いの焦点が「治療」から「予防」への大きな転換点」となったということで, 後世に記憶されることになるかもしれない. このような転換をもたらした一つの大きな要因は, 従来型の公的グラントに加え, 特にゲイツ財団などからワクチン開発を含む予防技術開発とその治験に対して巨額且つ組織的な資金援助が始まったためである. 本小エッセイでは, このような背景をバックとして, とりわけ疫学的視点からみて, 今後のエイズの制圧に向けた研究および対策に重要な影響があると考えられるエイズ世界流行の最新動向と, 流行制圧に向けた最新戦略とそのアプローチに関して述べたいと考える.