抄録
映画等で用いられているリアリティを追求したCGアニメーションでは,炎や水などの気体や流体の運動を表現するためにコンピュータによる物理シミュレーションが主に用いられている.しかしながら,水のように粘性の低い流体に対しても気泡が扱われておらず,現実の水と比べ粘性の高い液体に見えてしまう.そこで,流体シミュレーションのリアリティをより高めるために,流体中での気泡の動きや変形を扱うことのできる,気泡を考慮した流体シミュレーションを行うことを本研究の目的とする.そこで,本研究では一様に同じ大きさの計算格子を用いるよりも,データ量や計算時間で有利と考えられる適応的データ構造を用いた計算格子を用い,気泡の周りのみ計算格子を細かくする.このように作成した計算格子を用いて圧力場と速度場を数値計算により求め,それらを用いて気泡の速度を更新していくアルゴリズムを開発した.一様に細分割した計算格子を用いたシミュレーションと比較して,気泡の周りのみ計算格子を小さくした場合には,必要とするメモリが約10分の1,計算時間が16分の1となった.