抄録
スポーツの中でも野球は,一流投手からアマチュア投手まで幅広いレベルの選手が野球肘と呼ばれる肘関節障害による痛みを経験し,場合によっては戦線離脱を余儀なくされている.野球肘を予防するためには,肘関節の外反ストレスを軽減させる投球フォームの習得が必要である.しかし,外反ストレスの大きさは容易に自己認識できないことが野球肘の予防が難しい原因のひとつになっている.そこで本研究では,スマートフォンで撮影した映像から自動的に肘関節の外反ストレスを算出する方法について報告する.野球経験の有無や体重,身長の異なる13名の被験者の投球動作をスマートフォンと光学式3次元動作解析システムで同時に記録し,2種類のデータについて,逆動力学的アプローチにより各投球の肘関節の外反ストレスを計算した.その結果,提案手法と光学式3次元動作解析システムから算出した外反ストレスの平均絶対パーセント誤差が15.31%となり,実用可能性が示唆された.今後は,ユーザインタフェースを含めたスマートフォンのアプリの開発を行い,サービス化の検討を行う.