農業情報研究
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原著論文
稲発酵粗飼料の潜在需要と利用促進の方策
―選択型コンジョイント分析の適用―
平児 慎太郎千田 雅之
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2006 年 15 巻 2 号 p. 165-172

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抄録

本稿は, 稲発酵粗飼料 (以下, イネWCS) の評価を高めると考えられる開発技術を属性として組み込んだ選択型コンジョイント分析を適用し, 開発技術等に対する酪農経営の評価を明らかにした. また, 農家属性ごとのニーズや技術に対する評価の差異を把握するとともに, イネWCSの評価を高める効果的な技術, およびその開発技術に対する支払意思額を解明し, 利用促進の方策を示唆した.
その結果, 以下の諸点が見出された.
(1) イネWCSの利用を促すと考えられる要素について, 発酵品質の改善, 次いで通年給与, 給与技術の改善の順にニーズが高い. また, 取引価格に対する部分効用値は他の属性と比較してきわめて低い.
(2) 利用農家を乳量水準によって抽出し直したところ, 技術に対するニーズは異なっていた.
(3) 限界支払意思額は, 発酵品質の改善において最大1,471円/1ロール, 通年給与において最大1,356円/1ロール, さらに, 発酵品質と通年給与が両立された場合, 最大2,827円/1ロールと計測された.
現行の飼料イネの生産・利用システムは, 評価と生産コストとの間に存在するギャップを助成金で償うことで成立している. 酪農経営のニーズを満たす開発技術等が採用された場合, このギャップが縮小され, 助成金の削減が可能になるとともに, 他地域への普及性が高まる.

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© 2006 農業情報学会
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