農業情報研究
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原著論文
  • 北沢 知明, 谷本 佑, 廣瀬 拓也, 西森 空, 小原 敬弘, 中野 和彦
    2024 年 33 巻 2 号 p. 65-72
    発行日: 2024/07/01
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    果樹では熟練を要する作業が多く,新規就農を阻害する要因となっている.ユズの収穫および選果作業も,収穫では枝梢のトゲによる傷の発生や,選果では繁忙期の指導時間の不足から習得に時間を要する.そこで,これら作業の学習支援要点を可視化し,要点に基づき作成した学習コンテンツの学習効果を検証した.まず,上級者の動画,アイトラッキングデータおよび聞き取りを通じて,収穫に関する「動作」,「判断」および「結果」の10項目と選果に関する6項目を抽出し,定量化ののち,中級者または初心者の作業と比較した.上級者と中級者または初心者との間で差があった「判断」の項目を中心に,学習コンテンツ(クイズ形式の問題は収穫21問,選果528問,作業解説動画は収穫,選果各1問)を作成した.学習効果を作業未経験者で調査した結果,収穫では採果はさみによる傷および枝梢のトゲによる傷が有意に減少し,選果では果実の同じ面を何度も見ずに一目で選果を終えた割合が有意に増加した.したがって,初心者が学習コンテンツを用いて繰り返し学習することは,収穫および選果作業の「判断」に関係する知識の向上につながることが示唆された.

  • 安藤 拓翔, 井上 優良
    2024 年 33 巻 2 号 p. 73-80
    発行日: 2024/07/01
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    近年,小ねぎ生産における農業従事者の不足が深刻な課題となっており,人手を減らす小ねぎ調製機の開発が求められている.現行の調製機では一度に不要な葉を全て除去できず,小ねぎを調製機に通した後に,人手による不要な葉を取り除く作業を行う必要がある.二次処理の不要な調製を行うためには,小ねぎの最上部の分岐部位置にノズルを合わせて調製機へ投入することが有効であると分かっている.これを行うには,分岐部の位置は個体によって異なるため分岐部の位置を判別し,位置を揃えて調製機に投入する必要がある.したがって,画像認識により小ねぎ分岐部の位置を検出し,ノズルの位置を自動で合わせることが正確な調製につながると考えた.そこで本稿では,分岐部の検出を目的として,小ねぎ分岐部における特有の斜線を抽出する手法を提案する.本手法は,低消費電力で演算能力の低いエッジデバイスでの実装を目標として,エッジ検出による画像処理をベースとした軽量なアルゴリズムを用いる.本手法を実際の小ねぎ画像に適用して,Raspberry Pi 3で評価した結果,分岐部斜線の検出率は90.6%であり.処理時間は455 msを達成した.この結果より,本手法が分岐部の検出に対して有効であることが明らかとなり,実環境にて応用できる可能性が示された.

  • 島 武男, 落合 将輝, 小林 有紀, 石井 孝典, 小林 透, 鎌田 えりか, 斎藤 晶, 関口 博之, 吉田 重信
    2024 年 33 巻 2 号 p. 81-96
    発行日: 2024/07/01
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    2018年から南九州において,サツマイモの株が立ち枯れ,塊根が腐敗するサツマイモ基腐病が多発し,収量の減少が深刻な問題となっている.基腐病は日本では初めて発生が報告された病害であるため,海外での対応事例も参考にしながら,現在,基腐病の防除のために抵抗性品種の導入,圃場排水の実施,農薬散布等の対策が実施されている.これらの防除対策は,発病を低減する一定の効果が示されている.しかし,被害が甚大な地区においては,これらの対策技術を単一に実施しただけでは,被害の低減が難しい現状が報告されている.そこで,本研究では南九州の基腐病の被害が甚大な地区における36圃場を対象に発病状況と生産者による防除対策の実施状況に関する現地調査を行い,収集したデータを用いて防除対策の組み合わせの効果を検討できるネットワーク解析を行った.その結果,収穫後の腐敗イモの残渣処理や輪作により土壌残渣リスクを低減させ,降雨による湛水を低減するための排水対策を実施し,抵抗性品種を導入した圃場では被害が低減されていたことが分かった.このことから,本地区では,これらを組み合わせた対策を優先的に実施すべきであると考えられた.

  • Dong Thanh Pham, Takashi Okayasu, Daisuke Yasutake, Yasumaru Hirai, Ta ...
    2024 年 33 巻 2 号 p. 97-108
    発行日: 2024/07/01
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    As robotic systems become increasingly integrated into plant phenotyping processes, the quality of images captured plays an increasingly crucial role in accurate data collection and analysis. Here we address the challenge of assessing and enhancing image quality in the context of plant phenotyping robot using a pan-tilt-zoom camera. We present a data-driven approach using machine learning, specifically the Random Forest classifier, to classify both blurred and sharp images. Our method involves feature extraction, data preprocessing, hyperparameter tuning, and cross-validation. The resulting model demonstrates promising performance as indicated by its accuracy, precision, recall, area under the curve (AUC), and feature importance analysis. Notably, our results support a highly accurate classifier, achieving a correct classification rate of 95% for sharp images and 92% for blurred ones, a receiver operating characteristic curve with an AUC of 0.93, and a precision-recall curve with an average precision of 0.91. Shapley Additive Explanations analysis identifies “edge density” and “mean gradient magnitude” as influential to the classifier, offering valuable insights for future feature engineering and model refinement. The classifier has a short inference time (2.8 s) on a Raspberry Pi 4B computer, both improving the quality of captured images and automatically eliminating blurred images. By enhancing image quality assessment, this research improves data reliability and the overall effectiveness of plant phenotyping robots. We discuss the implications of these findings and their practical relevance and suggest directions for future research.

  • 岩館 健司, 二宮 和則, 小澤 克也, 鈴木 育男
    2024 年 33 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 2024/07/01
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    青果物の品質管理において必要不可欠な工程である良品・不良品の選別作業にNeural Network(NN)を基盤とする画像処理技術が導入され,高精度な判別が実現されている.一方で微細な特徴に基づく等級(グレード)判別の実現において従来のクラス分類を適用するだけでは複数の離れた等級にピークが現れるなど十分な精度が得られない場合がある.本研究では通常のクラス分類と等級の回帰の組み合わせにより離れた等級への誤判別を抑制し,クラス分類を等級判別に適用する方法を提案する.玉ねぎの裂皮(皮むけ)の等級判別を具体的なテストケースとして提案手法の有効性を検証した.比較実験の結果,提案モデルが従来の分類モデル・回帰モデルに対して判別精度を落とさずに離れた等級への誤判別を抑制することが示された.

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