農業情報研究
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原著論文
稲作法人経営における作業効率向上のコスト低減効果―FVS-FAPSを用いた最適営農計画による分析―
馬場 研太南石 晃明長命 洋佑
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2018 年 27 巻 3 号 p. 53-63

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抄録

我が国の稲作では生産コストを削減することが喫緊の課題となっている.そこで本稿では,稲作法人経営における作業者の作業効率向上によるコスト低減効果について数理計画法を用いて定量的に明らかにする.具体的には,先進大規模稲作法人経営の実測データなどを参考に,FVS-FAPSを用いて経営資源制約や気象変動リスクを考慮した最適営農計画を作業者の熟練度別に策定し,コストに着目した分析を行った.また,試算計画法の結果と比較し,本分析結果の検証を行った.分析シナリオとしては初心者シナリオ,実績シナリオ,熟練者シナリオの3つを想定し,稲作の主要な作業項目について熟練度別作業効率を設定した.分析の結果,「初心者シナリオから実績シナリオ」への熟練度向上によるコスト低減効果は29.5ポイント,「実績シナリオから熟練者シナリオ」では4.4ポイントとなり,数理計画法においても作業者の作業効率向上はコスト低減に効果があることを明らかにした.この結果は試算計画法を用いた場合と同様であり,本稿の結論がより一般化されたといえる.以上より,コスト低減を目指す農業稲作経営にとって熟練度の低い作業者に対する人材育成の取り組みが重要であることが示唆された.

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