2020 年 29 巻 1 号 p. 1-13
オープンソース技術を活用したパーソナルファブリケーション型(以下,自作型)の農業センサネットワークでは,個々の現場の状況にあわせて低コストで多様な圃場情報を効率的に取得できる.その一方,利用者はある程度の時間と労力を費やす必要があり,自作のための技術・知識・環境も求められる.そこで本研究では,自作型農業センサネットワークを利用するうえでの課題を明らかにし,筆者らが開発したオープン・フィールドサーバをベースにして多くの利用者が簡単に入手・組立・設定・設置・改良・使用までできるようにするための手法について検討した
まず,利用者にとってどのような計測システムが適切かを判断する指標を提案した.次に,自作型農業センサネットワークを利用するまでの工程や,そこで求められる技術・知識・環境について明らかにし,さらにどのような情報が提供されれば利用者の負担が軽減されるかについて検討した.これらを踏まえ本研究では,利用者の技術や予算に応じて複数の手段を選択できるオープン・フィールドサーバを開発し,入手から使用までの各工程で必要とされる情報をポータルサイトで公開した.また,オープン・フィールドサーバの組立・設定・利用に関する実験や,計測精度評価試験,農業場面を想定した利用実験としての微気象計測や小麦の出穂期予測を行った.これらによって,自作型農業センサネットワークの利用実現性や有効性を検証するとともに,残された課題や今後の展開ついて考察した