2022 年 2 巻 1 号 p. a1-a28
新型コロナウィルスは2020年以降,世界的な広がりを見せた.世界保健機関では人と人との物理的距離を1m以上,日本の場合は2m以上を保つことを推奨している.以上の背景から本研究では,新型コロナウィルス流行前後の日本の大都市における歩道上の歩行者間の物理的距離を,動画から深層学習の技術を用いて検出するアプローチによる統計的に比較・検証した.新型コロナウィルス流行前の映像は,2018年10月に大阪市御堂筋の難波地区で撮影されたものである.比較のため,2020年10月に同じ場所で新たに動画を撮影した.物体検出手法として一般的なYOLO v3 SPPを適用し,歩道上の歩行者一人一人を自動的に抽出し,精度評価を行った後,対象エリア内の歩道上に3つの観測エリアを設定し,歩行者間の物理的距離を計測した.物理的距離の測定には,平均最近隣距離とK関数の2つの指標を用いた.そして新型コロナウィルス流行前後の歩行者の物理的距離の変化を統計的に比較し,新型コロナウィルス流行後に物理的距離の増加がみられることを確認した.ただし物理的距離の増加は,歩行者の行動状態,密度,対人関係に依存する傾向があることが示唆された.