抄録
急速に進む建築・エンジニアリング・建設(AEC)業界のデジタル化において、建築物のエンドユーザーは、使用目的に応じた多様なビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)データの供給を求めている。しかし、特定の組織が管理する共通データ環境(CDE)では、プロジェクト指向のプラットフォーム理念、管理構造、セキュリティリスクにより、プロジェクトメンバー以外の第三者にデータを公開・配布することが難しい。解決策の一つとして、ブロックチェーン技術を活用したBIMデータの一般公開が考えられる。しかし、大容量のBIMデータの内容をどのようにブロックチェーンに記録し、ユーザーやアプリケーションからのデータ検索性を向上させるかについての研究は不十分である。
そこで本稿では、BIMデータ表現の標準仕様であるIFC(Industrial Foundation Classes)の情報を要約し、NFT(Non-Fungible Token)としてミントする観点から作成したメタデータ「IFC Catalog」を提案する。IFC Catalogは、IFCから抽出したStatic Fieldsと、データの目的に合わせたCustom Fieldsで構成されるJSONデータである。IFC CatalogはBIMデータそのものに比べて軽量であるため、ユーザーはNFTの検索、購入、管理のためのアプリケーションで簡単にその内容を確認することができる。作成された最小実行可能プロダクトでは、IFCカタログに記録されたIFCファイルの情報を、簡単な操作でアプリケーションインターフェース上に表示することができた。この実装により、ブロックチェーン技術を使用して大容量のBIMデータを保存できることとデータ検索性を向上させられることが実証された。