日本中東学会年報
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日本のマグレブ研究
宮治 一雄
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1988 年 3 巻 1 号 p. 247-274

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抄録

マグレブ諸国は日本からあまりに遠く、日本のマグレブ研究は近年になってようやく発展し始めた。そこでマグレブ諸国についての日本人の認識や関心のあり方を検討するには、マグレブに限定せず、ひろく日本と中東諸国との関係の歴史、認識の変化と研究の動向のなかで位置づける必要がある。日本における中東、アラブ世界に対する認識は、古来中国大陸からの情報に依拠していたが、江戸時代の半ばからヨーロッパ諸国からの情報に代わり、最近までこの状態が変化しなかった。しかし、日清・日露戦争後日本が台湾と朝鮮に進出して後進帝国主義の道を歩み始めるとともに、認識のあり方についてもヨーロッパ列強のそれを模倣するようになった。日本の台湾・朝鮮統治の方策を学ぶためにフランスのアルジェリア政策に関する研究が行われたことは象徴的であった。第二次大戦中のわずかな例を除けば、日本のマグレブ研究は、敗戦後に開始された。その後の研究関心の変化を概括すると次のような4つの時期に分けることができる。(1)民族運動への関心、(2)社会主義への関心、(3)経済状態への関心、(4)社会と文化への関心、である。このような関心の変化は、日本とマグレブ諸国の関係のあり方と密接な関係があり、マグレブの人々との直接的対話の機会が増えるとともに認識の深まりと研究の発展がようやく始まろうとしている。

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© 1988 日本中東学会
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