日本地理学会発表要旨集
2008年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P108
会議情報

長期評価の改良に向けた主要活断層帯の位置・形状に関する検討
布田川・日奈久断層帯および小倉東断層を事例として
*谷口 薫中田 高渡辺 満久鈴木 康弘堤 浩之後藤 秀昭活断層位置・形状 検討作業グループ
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抄録


1.はじめに
 活断層から発生する地震の長期評価において最も重要で基本的な情報は、活断層の位置・形状であり、とくに、ある程度の長さを持つ活断層によって構成される活断層帯(系)のどの範囲が一括して活動するのかを特定することは、地震規模の推定にとって極めて重要である。活断層の分布に関する基礎的な情報に不確さがあれば、その長期評価結果に深刻な影響を及ぼすことが懸念される。また、既存の活断層図を用いていわゆる「5 kmルール」(松田,1990)などを適応することには、本質的に大きな問題がある可能性も指摘されている(谷口ほか,2007)。この様な背景から、現在公表されている活断層図に示された活断層の認定根拠を再確認・再検討した結果、現状の既存資料にどの様な差異(不確かさ)があるのかを確認したので、ここに報告する。
2.方法と手順
 資料として、20万分の1程度及び2.5万分の1の縮尺で主要な活断層図(ここでは「九州の活構造」「新編 日本の活断層」「都市圏活断層図」「活断層詳細デジタルマップ」)の活断層トレースを重ね合わせた図を作成した。その図に基づき、現状として既存資料にどのような差異があるのかを確認した上で、空中写真判読を実施し、認定根拠をクロスチェックしながら縮尺2.5万分の1でマッピングを行った。調査者間で判断が一致しない場合は、意見分布をとりまとめた。また、地形図上にマッピングしたトレースはGISソフトウェア(MapInfo社MapInfo Professional)を用いて電子化を行った。
3.活断層の定義と区分
 以下の基準で活断層を認定し、その存在の確からしさを根拠に2種類に区分した。
 「活断層」:最近十数万年間に繰り返し活動したことが変動地形学的に確実に認定される断層
 「推定活断層」:最近十数万年間に繰り返し活動したことが変動地形学的に推定される断層(活断層の存在が推定されるが現時点では明確に特定できないもの,あるいは今度も活動を繰り返すかどうか不明なもの)。以上のように、単にリニアメントを抽出しその明瞭度に基づいてマッピングしたのではなく、高度な変動地形学的判断に基づいて活断層を認定した。
4.結果
 布田川・日奈久断層帯および小倉東断層について、主に米軍及び国土地理院撮影縮尺約1万分の1空中写真を用いて、既存資料をクロスチェックし、2万5千分の1地形図上に詳細なマッピングを行った結果、以下のような結果が得られた。
1)布田川・日奈久断層帯
 写真判読をした結果、従来指摘されていなかった新たな断層線がいくつか認められた。とくに、「松橋」図幅では日奈久断層の主トレースから北西方向に派生する活断層を新たに認定した。「健軍」や「鏡」図幅では、トレンチ調査が実施されているトレースの前縁(西側)により新しい変位地形が認められた。また、既存の活断層図では確実度が低いとされていたいくつかの断層をより確実度の高い活断層として再定義した。
2)小倉東断層
 従来の活断層図と大きな違いは認められなかったが、河谷の系統的な屈曲など、いくつかの明瞭な横ずれ変位地形が確認された。
 結果の詳細は当日ポスター発表にて示す。
 本研究は文部科学省からの委託研究費によって実施されたものである。

文献:松田 1990.地震研彙報,65,289-319.谷口ほか 2007.日本地球惑星科学連合2007年大会予稿集,S141-P026.

1):活断層位置・形状検討作業グループ:島崎邦彦(東大地震研)・今泉俊文(東北大)・宮内崇裕(千葉大)・粟田泰夫・吉岡敏和(産総研)・飯田 誠・木村幸一(国土地理院)

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© 2008 公益社団法人 日本地理学会
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