日本地理学会発表要旨集
2008年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P128
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富山市南部における局地強風とその影響
*田畑 弾
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抄録

 田畑(2007)において、屋敷林が多い地域であり、岩田(1999)において、風神を祀った不吹堂が存在する地域のひとつである、富山市南部における、局地強風を解析し、その影響、特に農業にかかわるものを考察した。
 強風の解析に用いたデータは、気象庁輪島測候所による高層観測より、850hPa面における風向を基準に、気象庁富山地方気象台、アメダス観測点の秋ヶ島、八尾、このほか、富山市大山消防署、立山町消防本部の、各風向風速計によるデータを地上の風データとして用いた。大沢野消防署のデータに関しては、2007年4月からのデータのみの保持であったため、2003年より観測しているアメダス秋ヶ島において、風速10m/s以上が観測された日を強風日とした。
 強風日と、輪島の850hPaの風向の関係は、冬期(12月~2月)はWNW~NW、春期(3月~5月)はSSE~Wを中心とした風向のときに強風が観測された。事例数は、冬期が56事例、春期が88事例、夏期が15事例、秋期が31事例である。なお、台風はそのうち夏期が7~8月に8事例、秋期は9月に2事例である。
 神通川の谷口である富山市旧大沢野町では、特産品としてイチジクを栽培する農家が存在する。この農家では、とくに強風が起こす果実の「葉ずれ害」から守るため、南向き、一部の園では西向きの防風ネットを張っている。
 イチジクの園芸カレンダーでは、4月に枝葉を伸ばし始め、8月~10月に果実を熟成させる。強風事例を重ねて考察すると、4~5月の強風が発生しやすい月を除いては、台風対策、または10月に日本海上を通過する低気圧によって発生する強風への対策で防風ネットを張っていることが考えられる。また、春期の強風に対する防風施設として、育苗ハウスにも防風ネットが張られている例があり、この場合は、屋敷林で覆われていない面に張られている場合が多く見られる。
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