日本地理学会発表要旨集
2008年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 308
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北海道むかわ町におけるホッキガイの資源管理
*初沢 敏生
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抄録

 本研究は北海道胆振支庁むかわ町を事例として、ホッキガイの資源管理の特徴と課題を検討したものである。むかわ町はわが国最大のホッキガイ産地である苫小牧市に近接し、1990年代初めまではホッキガイの中心的産地の一つだった。しかし、1990年代半ばから水揚げ高が急減した。この背景にはホッキガイの資源管理の変化があったと考える。
 現在むかわ町で行われている重要なホッキガイの資源管理としては大きさの制限と採取料の制限、それに禁漁区の設定などがある。むかわ地域の規制は北海道の規制を上回る厳しいものであるが、市場ではさらに良質のものを求めている。しかし、むかわ地域ではこれに十分に対応できていない。これは大量採取によって資源の質が低下したためである。
 この地域では1989年からホタテガイの稚貝放流事業が開始されたが、1992年の水害で大打撃を受け、漁業協同組合は多額の負債を負った。ホッキガイはこの負債を返済するための原資として注目され、多額の賦課金を課した上で大量採取が行われた。この結果、地域の資源状況は悪化し、その後の地域資源の劣化を招くことになったのである。その後、資源管理を強化したことによって一定の成果は現れてきているが、大量採取以前の状況には戻っていない。地域資源管理の失敗の影響は長期間に及ぶため、慎重に対応することが必要である。
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© 2008 公益社団法人 日本地理学会
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