日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 201
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IPCC-AR4マルチモデルにおけるアジア・西部北太平洋域の夏季モンスーン季節進行の再現性比較
*井上 知栄植田 宏昭
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抄録
 IPCC第4次評価報告書において地球温暖化予測に用いられた,第3次結合モデル相互比較プロジェクトの全球大気海洋結合モデルにおける,アジア・西部北太平洋域モンスーンの夏季平均場,および西部北太平洋域・東アジア域周辺にみられる,対流活動の段階的な季節的東進などについて,降水・循環場の地理的分布や,雨季の開始などの季節変化に関する気候学的観点から,観測データとモデル出力との比較解析を行った.  夏季(6~8月)平均場における観測とモデルの比較解析の結果,多くのモデルはアジアモンスーンの降水や風の場の広域的特徴を再現しているが,東アジアから西部北太平洋にかけての領域において,下層風や,北太平洋高気圧の位置や強さの再現性については,モデル間のばらつきが大きい.また,西部北太平洋における下層西風が観測より強い(弱い)モデルは,日本付近における太平洋高気圧の張り出しが観測より北偏(南偏)する傾向が確認された. 西部北太平洋およびその周辺領域における3度の段階的な季節進行の時期を調べるため,南シナ海(110°~120°E,10°~20°N),フィリピン東方(127.5°~140°E,5°~15°N),対流ジャンプ領域(130°~165°E,15°~25°N)における,半旬降水量の季節進行を比較した.南シナ海の5月中旬における雨季開始は,観測に比べてやや遅れて生じるモデルが多い. 6月におけるフィリピン東方の雨季開始の時期は最もモデル間のばらつきが大きい.7月における対流ジャンプの時期は観測に比べて2~4半旬早いモデルが多く,多くのモデルにおいて,3段階の季節進行の時間間隔が,観測より短い傾向を示す.このほか,観測と同様に結合モデルにおいても,7月中旬ごろの西部北太平洋上における対流活発化の再現性が,日本付近の梅雨明けの再現性にとって重要である可能性が示唆された.
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© 2009 公益社団法人 日本地理学会
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