日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 212
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2009年2月20日に関東平野内陸域で見られた 急激な気温上昇現象の事例解析
*渡来 靖
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抄録

1.はじめに
 関東平野では,越後山脈や関東山地を越えて吹き降りてくる気流によるフェーン現象によって,しばしば昇温がもたらされる.熊谷で国内最高気温(40.9˚C)を記録した2007年8月16日でも,フェーンが高温要因の一つであったことが示されている(例えば,渡来ほか 2009,日生気誌,46,35-41).
 冬季においては,関東平野では季節風が山を越えて吹き下ろす空っ風が吹くことが多いが,もともと冷たい気団のためボラ型となることが多い.しかし,2009年2月20日に,北西風に伴って急激に気温が上昇する現象が観測された.今回はその事例について,昇温要因を調べるために解析を行った.
2.事例解析
 2009年2月20日は,南岸低気圧の影響で未明に降水があり,熊谷や前橋では積雪も観測されたが,低気圧が関東の東に抜けると関東平野に北西風が吹き込み,北西内陸域を中心に急激な昇温が観測された.特に,関東平野北西内陸域の中央に位置する熊谷では昇温が大きく,15時から16時の1時間で3.0˚C上昇した.昇温と同時に相対湿度は急落し,北西風が急激に強まっていることから,フェーン現象が昇温の一因であることが示唆される.また,前橋・熊谷・東京の観測値を見ると,地上気温・相対湿度・風速の急変時刻は,前橋が14時,熊谷が16時,東京が21時頃であり,フェーンによる昇温の影響が時間とともに南東へ広がっている様子がわかる.
3.領域気象モデルによる再現計算
 詳細な昇温メカニズムを調べるため,領域気象モデルWRF(Ver.2.2)を用いた再現計算を試みた.初期・境界値には気象庁MSMデータを用い,計算初期時刻は2009年2月18日21時(日本時間)とした.
 再現計算の結果,気温の変化傾向や降水域など,概ね再現された.しかし,熊谷で観測された日最高気温は約5˚C過小となっており,十分再現されていない.今後はモデルのチューニングなどを行い,熊谷での急激な昇温の要因を調べる予定である.

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