日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S501
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奄美・沖縄離島における人口変化と高齢化
*宮内 久光平井 誠
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抄録
離島の就業構造は,雇用状況と直接関係があるため,離島の人口数や人口構造にも大きな影響を与えると考えられる。これまで,離島の人口を扱った地理学研究においても,島の就業構造の変化がその人口変化を規定している,と論じている。例えば,奄美・沖縄離島においては,平岡(1985)は鹿児島県瀬戸内町,矢野(1992)は鹿児島県大和村を事例に,高度経済成長期の人口減少の要因を,離島の従来からの生業の変化,すなわち農漁業就業者の減少という就業構造の変化に求め,人口減少の激しい集落を分布論的に検討している。一方,中山(1986)は鹿児島県与論島,宮内(2003)は沖縄県座間味島において,観光就業者の増大が,離島人口を微減にとどめた,あるいは増加に転じさせたことを報告している。
 以上のような従来の研究は,特定の市町村,あるいは特定の島を対象に考察したものが多く,奄美・沖縄離島全域を対象として,就業構造の変化と人口変化について全域レベル,圏域レベル,島レベル,集落レベルの各空間スケールで考察したものはない.また,単に人口変化だけではなく,それに付随する人口構造の変化,具体的には人口高齢化の状況についても把握する必要がある.そこで本報告は,これらの点について国勢調査結果を用いて地図化や統計分析など定量的アプローチから実証的に明らかにすることを目的とする.
 本報告で対象とする奄美・沖縄離島は44の有人島である(架橋島は除く).これら奄美・沖縄離島には1960年の時点で365,398人が居住していた.この時点の人口指数を100.0とすると,奄美・沖縄離島は1970年までの10年間で約18ポイント減の82.4へと人口指数を大幅に減少させた.その後,1980年では78.4,1990年では74.2へと漸減し,直近の2005年では70.2の256,442人まで人口が減少している.これは全国の離島の人口変化と同じ傾向だといえる.
 これを圏域別にみてみると,奄美圏域(8島)は期間中一貫して人口を減少させている.沖縄圏域(18島)および宮古圏域(8島)は1975年にそれぞれ人口指数を59.4,79.8まで一気に下落させた後は,ほぼ横ばいで指数が推移している.八重山圏域(10島)も1975年までに人口指数を78.3まで落とすが,その後人口は増加傾向を示す.2005年では人口指数も99.5までに回復した.このように,高度経済成長期に大幅に人口を減少させた奄美・沖縄離島であるが,低成長期に入った後は,人口変化は圏域ごとに異なる.
 島別,集落別の人口変化や人口高齢化の状況,就業構造との関係についての詳細はシンポジウム当日報告する.
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© 2009 公益社団法人 日本地理学会
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