日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P1408
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長野県内10市町における家庭のエネルギー消費量とCO2排出量
*畑中 健一郎浜田 崇陸 斉
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抄録

1.はじめに
 家庭からのCO2排出量は基準年から著しく増加しており、その削減対策が大きな課題となっている。家庭の省エネを効果的に進めるためには、エネルギー消費構造の実態を明らかにし、どこに重点を置いて省エネを進めていくのか検討する必要がある。家庭のCO2排出量は、これまで家計調査を中心にさまざまな統計資料を用いて間接的に推計が可能な県庁所在地のデータをもとに比較考察されることが多かったが、実態把握という面では不十分であった。とくに長野県の場合は南北に長く、標高差も大きいことから、県内でも地域による違いが大きいと考えられる。そこで本研究では、長野県内の家庭を対象にアンケート調査を行うことによって、自動車利用も含めた家庭のエネルギー消費の実態を把握し、それらエネルギー消費に起因するCO2排出量の推計を試みたので報告する。
2.調査方法
 調査方法の概要を表1に示す。アンケートは、県内家庭でのエネルギー消費の地域的な違いをみるために、10広域圏からそれぞれ1市町を選び、それぞれ住民基本台帳から200世帯、合計2,000世帯を無作為に抽出して、2009年12月に質問票を配布した。アンケートの回収数は979世帯、回収率は49%であった。
3.結果の概要
3.1 使用エネルギーの種類
 家庭の暖房、給湯、コンロでそれぞれ使用しているエネルギー種の割合は、回答世帯全体の平均で暖房は灯油が91%でもっとも高く、次いで電気が74%であった。給湯は灯油が55%、コンロはプロパンガスが64%でそれぞれもっとも高い割合であった。また、太陽熱温水器の使用割合は回答世帯全体の8.6%、太陽光発電は2.7%であったが、これらの設備の使用割合は、飯田市や佐久市など日照時間が比較的長い市町で高い傾向がみられた。また、薪ストーブと薪風呂の使用割合もそれぞれ4%前後あり、木質バイオマスが豊富な長野県の特性がみられた。
3.2 エネルギー消費量
 2008年12月から2009年11月までの1年間について、電気、都市ガス、プロパンガス、灯油の月ごとの消費量の世帯平均値は、いずれも冬季の消費量が多く、夏季の消費量が少ない傾向が見られたが、暖房での利用が多い灯油でその差が顕著であった。一方、台所のコンロでの利用が多いプロパンガスの季節差は僅かであった。また、市町別にみると、都市ガスは比較的料金が安い市町で、灯油は県内でもより気温が低い地域で消費量が多い傾向がみられた。
3.3 CO2排出量
 各世帯のエネルギー消費量をもとにCO2排出量を推計したところ、月別の排出量は冬季に多く、夏季に少ない傾向がはっきりとみられ、灯油の季節変動の影響がもっとも大きいことがわかった。年間の平均では、電気が35%、自動車燃料が32%、灯油が25%を占めていた。市町別の排出量では、灯油と自動車燃料に由来するCO2で大きな差がみられ、各地域の気温や交通環境の違いがCO2排出量に大きく影響していることがうかがえた。
 また、全国値との比較では、一人当たり排出量で26%多く、また、燃料種別では、灯油は3倍以上、自動車燃料も27%多く、逆に都市ガスは50%以上少ない。推計方法に違いがあるため単純には比較できないが、寒冷地であり、かつ自動車への依存度が高い長野県の特徴が現れているといえる。
4.おわりに
 長野県内の家庭のエネルギー消費実態をアンケートにより把握し、それに伴うCO2排出量を推計した。その結果、県内でも使用エネルギーの種類や消費量、CO2排出量に地域性が見られることが明らかとなった。今後さらに地理的要因やライフスタイルなど、CO2排出量に影響を及ぼす要因の分析を進め、効果的な省エネ対策に結び付けていきたい。

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