日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S0104
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地すべり地形のジオパーク化を構想する視点
*宮城 豊彦
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抄録
巨大な地すべり地をジオサイトとして位置づけることを想定した場合の、実施前の時点における留意点を地形・地すべり学の立場から考えたい。事例である宮城県の荒砥沢地すべりに対するジオサイトとしての興味は、1)稀に起こる自然の猛威を安全に追体験したい。2)自然の営みに対する理解を深めたい。3)あの有名な場所を一目見たい。など色々あろうが、現場で動かす立場としては、安全確保と興味喚起の両立を常に迫られる。また、自然は結構迅速に変化するので、時間との競争も課題だ。国の諸機関・自治体・住民・我々の様な者、外野、実に多種多様なステークホルダーが存在するので、誰もが納得する「こうすれば良い」という何かを明確には提案しにくい。とりわけ、このダイナミックな景観は、地すべりという自然災害プロセスによって創出されたばかりのものであり、歴史遺産にもなってない、生々しいもの、それ故に多くの人々の注目を得て、ジオパークの目玉にもなると目される。矛盾に満ちている。多種多様な関係者の千差万別な声や気持ちを集約し、安全に未曾有の災害を追体験し、自然の驚異への畏敬の念を抱き、自然理解と防災の意義についての認識を深めてもらう契機としてこの巨大地すべり地が利用されるなら、良かろうが、これを実現し、継続するには当事者がどれだけ輩出できるのかが鍵か。 極端な例として、私が荒砥沢地すべりというジオサイトで見せたいのは、地すべりメカニズムのダイナミックさ、防災対策の苦労、自然修復の見事さ、地史・地形発達となるが、これはいささかマニアックで、説明的にすぎるであろう。しかし私は荒砥沢地すべり地の外周と内部の精密な踏査を重ね其処がなぜ危険なのか、其処がなぜ凄いのか」を正確に説明できる状況を早急に実現したい。それぞれの立ち位置で、当事者意識を持ち、できることすることが集約されれば、観光でも教育でも防災でも、この場所はためになる。
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© 2011 公益社団法人 日本地理学会
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